AI導入の試算ガイド / 公開日 2026-09-18
デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)を使う前に決めること|どの業務をAIに寄せるかの見極め方
補助金の公募が始まると、社内の話は決まって「いくら出るのか」「どの枠で出すか」から始まります。 ところが申請書を書き始めた途端に止まるのは、ほぼ例外なく「で、どの業務に入れるのか」「それで何時間減るのか」が決まっていないからです。 枠の選択も、見積もりの取り方も、効果を書く欄も、全部そこから逆算して決まります。 この記事では、制度の要点を一次情報の所在つきで整理したうえで、申請の前に社内で確定させておくことの順番を書きます。
1. 2026年度の制度は、名前のとおりAIが対象に入った
長く「IT導入補助金」と呼ばれてきた制度は、2026年度から「デジタル化・AI導入補助金」という名称になりました。 名称にAIが入ったとおり、AIを搭載したツールの導入が支援の対象として明示された形です。 社内で過去の資料を引っ張り出すと旧名称のままのことが多いので、検索するときは新旧どちらの名前でも当たっておくのが安全です。
以下は2026年9月18日時点で公表されている値です。補助金は公募回ごとに上限・要件・締切が変わります。数字をそのまま稟議に貼る前に、必ず下記の公募要領の最新版で確認してください。
| 項目 | 公表されている値 | 読み方 |
|---|---|---|
| 名称 | デジタル化・AI導入補助金(旧・IT導入補助金) | AI搭載ツールの導入が支援対象に含まれる |
| 補助額 | 1者あたり最大450万円 | 上限であって、申請すれば出る額ではない |
| 補助率 | 基本 1/2。小規模事業者は賃上げ等の要件を満たすと 4/5 | 残りは自己負担。全額補助ではない |
| 申請枠 | 5つ(下記) | 枠ごとに上限額も要件も別 |
申請枠は次の5つです。
- 通常枠
- インボイス枠(インボイス対応類型)
- インボイス枠(電子取引類型)
- セキュリティ対策推進枠
- 複数者連携デジタル化・AI導入枠
一次情報は2か所です。制度の条件そのものは中小企業庁が公開している公募要領に、申請の手続き・登録の流れは中小機構の申請サイト(it-shien.smrj.go.jp)にあります。まとめ記事(当ページを含む)は更新が遅れることがあるため、金額と締切だけはこの2か所で突き合わせてください。
2. 枠を選ぶ前に決める3つ。決まっていないと申請書が書けない
申請書の効果欄は「導入して便利になります」では通りません。どの業務が、どれだけ、どういう根拠で減るのかを数字で書く欄です。 そして、その数字は補助金の制度を読んでも出てきません。自社の中にしかないからです。先に決めるのは次の3つです。
| 決めること | 出す数字 | 決まっていないと起きること |
|---|---|---|
| ①対象業務 | 業務名と、その月間工数(時間) | 枠も、必要なツールの種類も決まらない |
| ②削減見込み | 月あたり何時間減るか、年間でいくら分か | 効果欄が書けず、実績報告の基準も残らない |
| ③扱うデータの区分 | 公開/社内/機密/禁止のどれか | 導入後に法務で止まり、補助事業が完了しない |
③を軽く見ないでください。補助金は原則として事業を完了させて実績を報告してから入金される制度です。 契約したあとに「そのデータは外部のAIに出せない」と判明して使われないまま終わると、時間も自己負担分も返ってきません。
3. 対象業務の選び方——「困っている業務」ではなく「条件を満たす業務」
一番よくある失敗は、社内で最も不満の大きい業務を選んでしまうことです。不満の大きさと、AIで減らしやすいかどうかは関係がありません。 見るべきは次の4条件で、これを満たす業務ほど効果が数字で出ます。
- 件数が多く、毎月発生する。年に数回の業務は、どれだけ時間がかかっていても年間削減額が小さく、上限450万円の枠を使う理由になりません。
- 手順が文章で説明できる。「ベテランの勘」に依存する工程は、置き換えではなく下書きの作成までしか寄せられません。
- 入力と出力が決まった形をしている。受け取る資料の形式がばらばらな業務は、前処理のほうが重くなります。
- 間違いに気づける。出力が正しいかを誰かが数分で確認できる業務が向きます。確認に元の作業と同じ時間がかかるなら、工数は減りません。
この4条件の詳しい当て方と棚卸表の作り方は業務棚卸のやり方に、任せてよい業務の線引きはデータ区分で線を引く判断基準に分けて書いています。
4. 効果欄に書く数字の作り方
使うのは3段の計算だけです。凝った式は要りません。
①月間の削減時間 = 導入前の月間工数 − 導入後の見込み工数
②年間削減額 = 月間の削減時間 × 12 × 時間あたり人件費
③自己負担の回収期間(月)= 自己負担額 ÷(②÷12)
③が申請の判断そのものです。補助率1/2なら費用の半分は自社が出します。その自己負担分すら回収できない試算になるなら、補助金が出ても導入しないほうが得という結論が正しく、枠を変えても状況は変わりません。 補助金は費用の一部を軽くする仕組みであって、合わない投資を合うようにする仕組みではないからです。
導入前の工数の測り方(確認する人の時間を入れるなど、盛ると全部が崩れる点)は工数削減の計算方法に、稟議へそのまま貼れる表の型はAI導入ROIの計算式にあります。
5. 申請前に潰しておく落とし穴
- 先に契約・発注しない。補助事業には開始できる時期が決められています。交付決定の前に支払ってしまった費用は対象外になるのが一般的です。順序は必ず公募要領で確認してください。
- 対象になるツールは登録制。この制度では、あらかじめ登録された事業者・ツールの組み合わせでしか申請できません。導入したいツールが登録されているかは、中小機構の申請サイトで先に確かめます。
- 実績報告まで含めて工数を見る。申請書の作成、見積もりの取得、交付決定後の実績報告と、事務作業は数十時間規模になります。この時間も投資額の一部として試算に入れてください。
- 導入前の数字を今のうちに残す。実績報告で効果を書くとき、導入前の工数を測っていないと比較のしようがありません。申請の準備期間が、実は唯一の測定チャンスです。
6. まず、どの業務が対象になりそうかを3分で出す
ここまでの手順のうち、社内の調整が要るのは②の削減見込みです。逆に言えば、当たりをつけるだけなら数分で足ります。 申請の準備に何十時間も使う前に、その業務がそもそも条件を満たしているかを先に確かめるほうが早い。
トップページの10項目の診断に答えると、月間工数・年間削減見込みの幅・投入データの区分・4週間のPoCに向くかどうかを、登録も氏名もメールも不要でその場で出せます。 結果には増減の内訳と、やらないほうがよい場合はその理由まで表示します。申請書の効果欄を書き始める前の「当たり」として使ってください。
申請前の業務選定から、貴社の数字で組み立てます
どの業務を対象にするか、導入前の工数をどう測っておくか、扱うデータをどこまで出せるか。申請書の効果欄に書ける形まで、検算できる1枚にします。
いただいたご相談には、3営業日以内にご返信します。
初回45分のみ無料です。ヒアリングの結果、Claudeを使う価値がないと判断した場合はその場でお伝えします。